朝クラ
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アーティストインタビュー Vol.3 五十嵐紅さん

2018年3月のAsakura Futures Concertにご出演いただいた、五十嵐紅(いがらし こう)さんに、演奏会後インタビューさせていただきました!演奏家として一流を目指すのは当然、それだけでなく、自分から音楽の魅力を伝える企画をプロデュースし、活躍の場を広げている五十嵐さん。ギターとの出会いや、音楽、活動へのこだわりをお聞きしました。

 

 

 

Q1 ギターを始めたきっかけは?

「6歳の時、サンタさんが持ってきてくれた」のが出会いです。

当時楽器と一緒に届けられた教本が「クラシックギター教本」だったという偶然から、クラシックギターを弾くようになりました。ギターというと、周りではロックやポップなどのバンドギターをやっている人が多かったですが、小学生だったので、そんな違いにも気づくことなく演奏していました。

 

Q2 演奏するだけでなく、自ら企画もされているとのことですが、普段のお仕事を詳しく教えていただけますか?

今の仕事は、クラシックギターの演奏家の仕事、私が関係するお客様へのコンサートのご提案と、主催公演、「水曜日のクラシック」の3つですね。

演奏家の仕事は、ホールや、美術館などで行うソロ演奏や、アンサンブルも力を入れています。アンサンブルの幅を広げたいと思っているので、自分で編曲をして、いろいろな楽器との編成でやっています。クラシックギターは、楽器奏者自体が少ない中、大きな音もならないという制約もあって、レパートリーが少ない楽器。でも、音もいいし、相性がいい楽器がたくさんあるので、編曲して(レパートリーを)広げていく。そういう活動は、演奏家としての活動の半分以上を占めると思います。

 

 

Q3 水曜日のクラシックについて教えてください。

原宿で、毎月第2水曜日の夜に「水曜日のクラシック」を主催しています。

50席という小さなサロンなので、大きなホールでは味わえないような臨場感がある。演奏家との距離も近いものを感じることができる空間だと思います。

私の周りの本当に素晴らしい演奏家さんで、でも若手なのでなかなか人を呼んで演奏会というのは難しいという方をご紹介したいという意味もあって。原宿という立地や規模感も、あたたかみのある空間だと思うので、より魅力が伝わるかなと。

対象としてはクラシックがすごく好きなファンというだけでなく、クラシックは興味があるけど、演奏会に足を運ぶ機会はないという方。そういう方が「水曜日のクラシック」に来ていただくことで、足を運んで、ホールで聴く楽しみを知っていただくきっかけになりたい。そのためにいろいろなコンセプトを決めて、それに合うようなコンサートを毎月やっています。

コンセプトは「すぐそばで、音楽を聴こう。」というものがある中で、イメージしているのは美術館の企画展。たとえばウフィツィ展のような。一貫性があると、楽しいと思います。コンセプトと音楽は意識してコンサートを作っています。

コンセプトについては、例えば4月なら桜、春、お花見など、連想ゲームのようにしていくと、そのとき、その季節、その奏者でしかできないものは見つけられるし、それを探すのは楽しい。

アイデア豊富だねって、よく言っていただけるのですが、あまりそういう意識はなく、こういうのあったら自分は楽しいなとか、僕のことを応援してくださっている方が、クラシックファンだけではないので、そういった方にクラシックを聴いていただくためには、どんな演出だと楽しんでいただけるかなと考えると、そういうコンセプトや色合いを持つと、共感していただきやすいのではと思っています。

 

 

Q4 クラシックを、どういうところを魅力に聞いてもらいたいですか?

クラシック音楽って、歴史に残ってきた音楽ということで、敷居の高さはあると思います。僕は、クラシック音楽は敷居が高くていいと思っているんです。クラシック音楽はプレミアムなもの。心血を注いだものが100年、200年と残っていることはすごいことだと思います。演奏家も、一生懸命練習して、技術を磨いて演奏していて、すごくこだわられたものだと思う。

クラシックへの抵抗が減ってほしいと思う一方、やっぱり歴史の中で、選りすぐられたものが残っていると思うので、そういった演奏家の努力や、作曲家の努力、芸術品としての価値は認めてもらいながら、そういうものとして、より親しんでいただきたいと思います。

やはり、上を目指している演奏家は、芯があって、一生懸命で、誠実です。いいものを目指しているからこそ、お客様にもいいものだと思って聴いてほしい。

 

Q5 ギターの楽しみ方は?

ギターの楽しみ方は、多岐にわたります。メロディーもひけて、伴奏もできるというところは魅力。アンサンブルをよくやりますが、フルートとピアノはよくきくけど、ギターとやるとどうなるんだろうという(新しい組み合わせ)のをやりたい。

ギターは小さなオーケストラ。多彩な音を持っています。ピアノやオーケストラにもない響きを楽しんでいただけるのではと思います。

 

Q6 さいごに、演奏家として仕事をするうえで大事にしていることを教えてください。

仕事をする中で一番大事にしているのは、演奏家として1番を目指すこと。1番を目指しても1番にはなれないと思うけど、10番を目指しても10番にはなりません。自分の中でベストを尽くすという事ですが、向上心が、演奏でも、仕事でも大事だと思います。

クラシック音楽の一番評価されるところは、演奏の能力だと思います。そこに妥協はしちゃいけないのかなと。

それと同じくらい大事なのは、人を大事にできるかどうか。仕事を依頼いただいて、ぼくが共演者を探して、演奏する。その演奏を聴きに来てくださるお客様、スタッフ、みんなが幸せになるのがいいと思っています。

依頼した方からは、この人にお願いしてよかったといわれる仕事をしたい。演奏者さんは、僕と仕事ができてよかった、いい会場で、いい演奏ができた、奏者として満足できる環境を作りたい。そして、お客様もいいものを聴けたね、と。これが大事なんじゃないかと思っています。

自分が音楽でかかわった人は、みんな幸せになってほしいし、自分がかかわった仕事で人を幸せにできるようになりたい。音楽って、それができる仕事だと思います。音楽は、豊かさじゃないですか。人を幸せにできると思う。それを目指したい。

まず演奏家として実力がある。それと同時に、人を幸せにするのが大事だと思います。

 

 

さすがの情熱とこだわり!実際にお話を聞いて、思いの強さを感じました。

五十嵐さんが主催されている「水曜日のクラシック」は、原宿のhall60(ホールソワサント)で毎月開催されています。

ぜひ、まずは原宿の「水曜日のクラシック」からクラシックを始めてみては。

「水曜日のクラシック」特設ページはこちら

https://suicla.blogspot.com/

 

 

アーティストプロフィール

五十嵐紅さん(クラシックギター)

東京音楽大学卒業。第29回ジュニアギターコンクール高校生の部1位、第27回スペイン音楽ギターコンクール第2位ほか様々なコンクールで入賞。ソリストのほか多くの演奏家と共演。日本橋三越「春の宝飾展」や重要文化財明日館などでコンサートを企画・監修。「水曜日のクラシック」主宰。50gt代表。クラシックギターを伊東福雄、江間常夫、荘村清志各氏に師事。