朝クラ
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イタリア留学情報ページ『Vissi d’arte, vissi d’amore』Vol.5 ~先輩へのインタビューその3 斉藤あゆみさん~

こんにちは!2018年秋からイタリア・ミラノ留学中の清水優美(しみずゆみ)です。

 

過ごしやすい気候が続いていますね。

ミラノにも、春がやって来て、木々が色づいてきました。

今年の春は日本にいないのでお花見ができないかなぁ…と思っていたのですが、なんとイタリアでも梅や桜を見かけます!季節の花々を楽しむことができる喜びは、日本もイタリアも同じですね。

 

さて、前回、前々回とご好評をいただいた、留学経験のある先輩へのインタビュー。今回は、フランス・パリでの音楽院留学をご経験され、現在はイタリア・ミラノ在住の斉藤あゆみさんにお話を伺いました!

 

あゆみさんと私の出会いは、2015年の夏。サルデーニャ島・カリアリで開催された夏の講習会(本連載のVol.1を参照)でした。こうした素敵な出会いがあるのも、マスタークラスに参加する醍醐味かもしれませんね。

 

音楽を始めたきっかけ

-この度は、インタビューをお引き受けくださり、ありがとうございます!サルデーニャでの出会いから早4年。こんな風にまたお話できる日が来るなんて、本当に嬉しく思っています。どうぞよろしくお願いいたします!

 

こちらこそありがとうございます。マスタークラス以来SNSでは繋がっていたけれど、まさかミラノで直接お話しできる日が来るとは!

よろしくお願いします。

 

(イタリア・サルデーニャ島のカリアリでの夏の講習会にて)

 

―さて、早速ですが、音楽を始められたきっかけはなんだったのでしょうか?

 

父がクラシック音楽好きで、その影響からか小さい頃から音楽に馴染みがあってピアノやダンスを習っていました。

音楽大学受験を決めたのは、教会で聴いた師匠である高須禮子先生の歌声に鳥肌が立つほど魅了されたのがきっかけです。日本語の歌詞がメインのコンサートだったのですが、歌声がとにかくキラキラ輝いていて、言葉がストレートに胸に届くんです。私もこんな風に歌えたら!と思いました。

 

 

フランス歌曲に魅了されたのは、日本の音大時代から

―その後、大阪音楽大学に進学されたあゆみさんですが、大学時代のことや、歌の専門の分野について教えていただけますか?

 

高校は普通科だったので、大学に入って、声楽を専門に勉強する人がたくさんいることに驚きました。 特にフランス歌曲の授業が大好きで、毎回授業に行くのがとても楽しみでした。ドビュッシーやフォーレの歌曲を視聴室で探したり、CDを買ってよく聴いていました。

 

(パリのお気に入りの美術館)

 

フランス留学を考え始めたきっかけ

―大学時代から、フランス歌曲の魅力にひかれていらしたのですね。大学時代に自分の好きな分野がなんとなくでも見えてくると、卒業後の進路選択の道しるべになるような気がします。留学を考え始めたきっかけはありましたか?

 

フランス歌曲やオペラを試験やコンサートなどでレパートリーとして取り入れることが多くなってきたものの、言葉が話せないのに歌うことは説得力に欠けるのではないかとモヤモヤしていました。言葉をもっと理解して、現地の空気を感じて取り入れられることがあれば、もう少し自分も納得して歌えるだろうと思い留学を考え始めました。

 

(市役所でのコンサート。ピアニストの先生とリハーサル。)

 

留学を充実させるカギは、「準備期間」をしっかり取ること

―私も、イタリア留学を決めた理由の一つに、「現地で言葉を学びたい」ということがありました。その国で生まれた音楽をその国で学び、その国の言語で歌うこと…本当に留学は尊い時間だな、といま改めて感じています。ところで、留学はいつごろから準備を始められましたか?準備で大変だったことなどもあれば、是非お聞かせください。

 

大学を出たあと二年間は仕事をしながらオペラ研修所に通っていましたが、今のうちに音楽だけに集中しようと思い留学を考え始めました。

パリへは何度か先生探しや、舞台鑑賞をする短期間の旅をしましたが、本格的に準備を始めたのは渡仏する一年前ぐらいです。

最初に、在日フランス大使館のホームページの指示に従って準備しました。

音楽院は渡仏してから決める予定だったので、まずは語学学校を探しました。

ビザの申請時に、フランスで入る学校の登録証明(登録期間と、週の授業時間がビザ取得のための既定の時間を満たしているという証明)が必要で、それを出してもらえる、且つ長い期間通いたいと思う良い学校を探すのに少し時間がかかりました。

友人に紹介してもらって現地に住んでいる人に連絡を取ったり、直接学校に問い合わせて情報を集めました。

日本人スタッフがいらっしゃるところもいくつかありました。

 

(パリ市内で)

 

―学校選びは、留学生活を送る上でとても重要ですから、慎重にしたほうが良いですよね。音楽院はどのように決められましたか?

 

フランスの音楽院情報があまりなかったので、6月末に渡仏して入試までの2ヶ月間は紹介していただいた先生を訪ねたり、ちょうど夏の講習会シーズンに入ったので気になる先生を当たって参加しました。

噂で聞いていたこととは違ったり、先生との相性など会ってみないと分からないこともあるので、十分に準備時間を取れたことが良かったと思います。

 

(夏はヨーロッパ各地で講習会が開催されている)

 

(野外オペラが鑑賞できるのも、夏の醍醐味)

 

―そうですよね。準備期間をどのくらい取れるかによって、留学の充実度は変わってくるように感じます。6月末から2ヶ月の準備期間を経て、いよいよ入試。フランスの音楽院のシステムや、試験内容について伺ってもよろしいでしょうか?

 

フランスには国立、市立、区立あとは私立の音楽院があります。

私は師事したい先生がいる学校に絞って受験しましたが、中にはビザが取れない学校もあるので、音楽院でビザを取りたければ先生や学校に確認した方が良いですね。

私は最終的に三つの音楽院を受験しました。

だいたい9月半ば頃からスタートして、遅い学校でも10月頭ぐらいまでには終わります。スケジュール的に少しハードになりますが、課題は被っているところもあったのでこの期間はそれをメインに取り組みました。フランス歌曲はどこも必須でしたね。

 

(音楽院にて、コレペティトールの先生とレッスン)

 

ついに始まった留学、言葉の壁、学生寮での生活やレッスンのこと

―そして、ついに念願の音楽院へ合格されました。フランスでの留学生活はどのようなものでしたか?音楽院での思い出や、日々の生活の様子など、ぜひお聞かせください。

 

留学一年目は朝からお昼過ぎまで語学学校、午後は音楽院に通い一年があっという間に過ぎました。

初めは、音楽院でのレッスン時間のほとんどが発音指導だったような気がします。

先に進みたい、もっとレパートリーを増やしたいともどかしく思っていましたが、どの先生も発音に関して特に熱心に指導されるので、私もそれを重視するようになりました。

 

(音楽院でのオペラのマスタークラス。他にも様々なマスタークラスが4ヶ月に1回ほど企画されていた。)

 

きちんと歌って、声がよくても、言葉が伝わらなければこちらの人は喜んでくれません。今となっては、時間をかけてきちんと向き合うことができて良かったと思っています。

実技の他に音楽理論、音楽史など座学の授業もありましたが、語学の壁は厚く、何を学んだ時間だったのかさっぱりわからず悶々と帰宅する日々が続きました。

 

(音楽院でのバロックコンサート)

 

生活面では、学生寮に住んでいたので、積極的にフランス語を話す仲間の輪に入って過ごしました。

パリのあらゆる大学に通う学生が集まる学生寮だったので、いろんな国、分野の人との出会いも新鮮でした。

 

そのうち気の合う友人が出来て、週に三回ほど夕飯を共にしながら一日の出来事など話したり、週末は小旅行に出かけたりしました。

 

(あゆみさんがお住まいだった学生寮の本館。ジムや食堂も完備されている。)

 

(寮は国別で分かれている。2年目に住んでいたスイス館でチーズフォンデュ)

 

(親友との週末のお出かけ)

 

言葉を学ぶことも義務感でなくなると、とても楽しく身に付いて一年が経つ頃には少しずつ自信がついてきたような気がします。

 

(学生寮の仲間とピクニック)

 

こちらの人は他人のことはもちろん、自分のことでも良いところを認めて自然に言葉にし合っていて素敵だなと感じます。

音楽院の友人たちも、自分の長所をよく知っているので、本番やいざというときに自分をアピールするのが上手です。

私ももっと自分の良いところも見つけて生かしていかなければと思いました。

音楽院の先生方も、貴方の魅力を発揮できるものから取り組もうと仰ってレパートリーや目標設定のアドバイスをしてくださいました。

自信のあることにさらに磨きをかけていくというのはとても楽しいですし、苦手なものを克服するにも近道な気がします。

 

(音楽院のコンサートホールにて)

 

パリの音楽院を修了、現在は、ミラノにて新生活を開始。

―パリの音楽院を修了され、昨年からはご主人のお仕事のご都合で、ミラノにお住まいをうつされたあゆみさん。ミラノとパリの違いについて感じられることはありますか?

 

パリは劇場や音楽ホールがたくさんあって、学生券なども入手しやすかったので気軽に音楽鑑賞ができ、プログラムも豊富で今月はどれに行こうかと楽しみでした。

でも、フランスはとにかくバカンスが多い!笑

メリハリという意味では良いかもしれませんが、留学生活は限られているので時間の使い方はしっかり自分で決めたほうが良いかもしれませんね。

音楽鑑賞チケット、公共交通機関の定期券など、学生( というよりは年齢制限 )対象の割引がしっかりあって助かりました。

住居に関しては、国が補助している住居手当があって外国人でも申請できます。

そのような手当はイタリアにはないそうですが、全体的な物価はミラノの方が断然安いです。

カフェやレストランに入っても、パリの半額ぐらいで済むのでついついいろいろ食べてしまいます。

ミラノも、イタリアの中では大きな街ですが、パリに比べて人は少なく、道や電車もきれいです。落ち着いて過ごせてとても気に入っています。

 

―ミラノの方がパリより街が落ち着いていてきれいとは意外でした。とはいいつつも、住む環境や国民性は、パリもミラノも日本とはかなり異なるところがあり、日々考えさせられますよね。良い意味でも悪い意味でも日本は、「便利すぎる」ので、その差に驚くこともしばしばあります。私も、留学開始直後に電気のブレーカーが上がって戻らなくなり、ドライヤーが使えずに焦ってあゆみさんに電話させていただいた思い出が…!その節は、お世話になりありがとうございました。笑

 

いえいえ、とんでもないです。笑

初めは言葉も難しいし、頼る人もいなくて急なトラブル大変ですよね。

私も周りの人にたくさん助けていただきました。

しかも日本で生活していた時には馴染みのないようなことが起きます。パリでは、頻繁にスリを目撃したり、私自身もひったくりにあって怖い思いもしました。ちょうど大きなテロが起こった時期で、不安な日々を過ごしました。

びくびくしている私に対して友人たちは、怖いけれどひるんでたら負け、普段通りにしなくちゃ。とすぐに普段通りの生活に戻っていたのには驚きました。

日常生活の中で、国や格差社会などの深刻さを目の当たりにするので、平和に育った自分の環境のことなどいろいろ考える機会になりました。

 

(パリ留学時代の学生寮の前の公園。)

 

―最後に、今後の抱負、夢など教えてください!

イタリアに来ることは全くの予定外でしたが笑、音楽も語学もまた新しいものを学べる機会に感謝しています!

 

こちらでも良い先生に出会って、今はイタリアもののレパートリーを中心に勉強しています。オーディションやコンクールにもそのうち挑戦したいです。

 

イタリア語はフランス語と文法がほとんど同じなので、フランス語を始めたときほどのつまづきはないですが、話すのと聞くのはまた別ですね。

語学学校に通ったり、パリで仲良くしていたイタリア人の友人に相手をしてもらって特訓中です。

日本に帰るときには、自分の強みになるもの、沢山の人にお世話になった分皆に喜んでもらえるものを沢山持って帰れたらと思っています。

 

プロフィール

斉藤 あゆみ

大阪府出身。大阪音楽大学、同大学専攻科修了。

2014年に渡仏。リール・エ・デザールコンクールにて審査員満場一致でコンクールディプロマを取得。クレドールコンクール第2位。

2017年にリュエイル・マルメゾン地方音楽院にて声楽クラス、室内楽クラスを審査員満場一致の最優秀成績で卒業。 これまでにオペラ「フィガロの結婚」(スザンナ)、「ヘンゼルとグレーテル」(グレーテル)、「ランタン灯での結婚式」(ドニス)などに 出演。日本、フランスで多数コンサートを行う。

高須禮子、Mary Saint-Palais、Marie -Claude Solanet、Marinella Pennicchiの各氏に師事。 ミラノ在住。

 

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