こんにちは!2018年秋からイタリア・ミラノ留学中の清水優美(しみずゆみ)です。
日本では、新元号がスタートして早1ヶ月。GWの連休は中々に活気のある日々であったことと思います。
イタリアでも、日本の新しい時代の幕開けは話題になっていて、テレビのニュースで何度も目にしました。
さて、シリーズ化しつつある、留学の先輩へのインタビュー。
今回は、国立音楽大学・大学院を修了後、現在はミラノ市立音楽院修士課程バロック声楽専攻に在籍されながら、すでにプロのカウンターテナーとして、学外でもご活躍中の新田壮人(にった まさと) さんにお話を伺いました!
歌、音楽に対して、常に誠実に、そしてプロフェッショナルな姿勢で取り組んでいらっしゃるのがとても印象的な先輩ですが、イタリアでのリアルな留学生活、そして本番前のお決まりのルーティンのことなど、幅広くお話いただきました。
(イタリア・ミラノ Auditorium Verdiでのコンサートに出演)
-この度は、ご多忙の中インタビューをお引き受けくださり、ありがとうございます!国立音楽大学時代からイタリア留学を考え始めたきっかけ、留学生活、こちらでのお仕事のことなど幅広く伺えたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
―さて、早速ですが、音楽を始められたきっかけはなんだったのでしょうか?
小学2年生の時”カエルの歌”を音楽の授業で歌ったのがきっかけです!小学1.2年生の時担任だった先生が地元の合唱団も受け持つ方だったので、その時スカウトされ小学3年生から入団しました。高校3年生の夏まで続けました。
(イタリア・ミラノにて、合唱のお仕事も)
―合唱がきっかけで音楽を始められたのですね。国立音楽大学学部を経て、同大学院を修了された新田さんですが、どのような学生生活を送っていらっしゃいましたか?
国立音楽大学に通っていた6年間も本当に音楽漬けの毎日でしたね。大学入る前は完全に独学で勉強していたので、音楽に対する知識が周りより著しく低かったですし。
また学部4年間はどこかの門下演奏会があると知ったら予定空いていればほとんど行っていました。無料で観に行けるのと、歳の近い学生の演奏から得るものが多いとの考えだったので。そこでレパートリーや技術を盗んだりしてました。
大学院では授業が多忙すぎて、正直それをこなすので精一杯でした。
(大学で師事していた福井先生)
(大学院修了演奏会)
―ストイックに学ばれる姿勢は、大学時代も今でも変わらないのですね。本当に尊敬しています。さて、留学を考え始めたのはいつ頃でしたか?また、きっかけなどがあれば教えてください。
留学を考え始めたのは大学院2年生の卒業式前でした。著名な外国人カウンターテナーの公開レッスンを受ける機会を外部で頂き、その時の指導にとても感銘を受けたので、少しずつ留学を考えるようになりました。
(留学のきっかけとなったカウンターテナーのイエスティン・デイヴィス氏との公開レッスン)
―現在、ミラノ市立音楽院修士課程バロック声楽専攻に通っていらっしゃいますが、学校はどのように探されたのですか?また、選ばれた決め手などがあれば合わせてお聞かせください!
大学院修了後いくつかお仕事をいただく機会が増え、日伊修好記念のオペラに出演した時に、留学経験のある共演者の日本人から、イタリアにいいカウンターテナーの先生がいてミラノ市立音楽院で教えていると情報を聞き知りました!
イタリアのバロック音楽をカウンターテナーの先生に本格的に教えていただきたいと思い、この学校を選びました。
(イタリア留学のきっかけとなった日伊修好記念オペラ「ジャパンオルフェオ」のワンシーン)
―留学はいつごろから準備を始められましたか?準備で大変だった経験などももしあればぜひ伺いたいです。
長期留学前の準備は一年前からしました。語学学校に通い、住む家を探したり、入学試験で弾いていただく伴奏者を探したり、短期で行く日程を決めるなどなどですね。
準備で大変だったことは、やはり語学ですね。
日本でかなり準備してきたつもりでしたが、最初の一年は何もわからずすごく大変でした。
語学の準備はしっかりしておくのをおすすめします。
(初めてイタリアへ行った時の写真)
―留学を考え始めたら、まずは語学を始めることが、日本でできる最初の一歩かもしれませんね。一年間の準備期間を経られて、いよいよ入試。試験内容や雰囲気はどのような感じでしたか?
先生とはすでに知り合っていたので、試験の雰囲気はそこまで張り詰めた感じではありませんでした。ただ、私は志望校一本だったので、かなり緊張していたと思います。
内容はバッハ1曲、バロック前期・後期オペラアリアのアリアの中から2曲でした。ちなみにそのときは15人中合格者4人でなんとか通りました。
(ミラノ市立音楽院。無事合格。)
―私はイタリアに来て、いまちょうど8ヶ月が経とうとしていますが、充実して楽しい反面、思い通りにいかないことや、生活の上での日本との環境の違いについて考えさせられることが多々あります。音楽院や、日々の生活はいかがですか?実際に暮らしてみて初めてわかったことや、イタリアならではのエピソードなどがあればぜひ!
たくさんありますね。日本はすごく便利で安全な国なんだなーと改めて感じます。
私の場合、疲れているときに財布を2度盗まれてます。3月ごろ、どちらも日本人がたくさん来る時期でした。財布だけでなく滞在中に色んなものを盗まれました。変装して光熱費といって家に直接堂々と詐欺をしようとしてくる人もいました。
それから冬は体調管理がかなり難しいので日本から薬をたくさん持っていったり良い保険に入っておくのをおすすめします。
交通機関も急遽休業(スト)などで止まることも多いです。
あと全部のことに対して人によって言うことが違うので誰も信じてはいけません笑
一番精神的に辛いのはイタリア語でうまく意思疎通ができなくて日本ではすぐできることもイタリアでは時間がかかっちゃったりできないことですかね?滞在許可証の件でも何回もトラブルがありましたし。
挙げるときりがないですね。
(疲れ果てたときに行ったクレモナ。最高でした。)
音楽院、特にバロック科は日本人が少なく向上心がある外国人生徒が多くて、イタリア語を使ってディスカッションすることができるため、音楽面・語学面においてとても充実しています。
また他国から音楽家としても著名な方々を講師として雇ったり、夜10時まで学校があいていたりなど勉強に集中できる環境も整っています。
(音楽院の声楽(飲み)仲間たち。)
(音楽院のプロジェクトでミラノ・スフォルツェスコ城でのコンサート)
―昨年度からイタリア留学を開始され、すでにイタリアでも演奏のお仕事をされていますが、日本との違いなどはありますか?また、お仕事をされる上で大切にされていることや、本番前のルーティンなどはありますか?
幾つかの演奏会に出演させていただきましたが、日本と大きく違うと思ったことは稽古場の雰囲気ですかね。指揮者がいる演奏会でも他の共演者たちは歳関係なく自分の意見をぶつけあうイメージがあります。私もこう演奏したいという想いが強いタイプなので、その環境がとても好きですぐに溶け込むことができました。
それから来てくださるお客様方は耳が肥えていて純粋に音楽を楽しみに来てる方が多いので、経歴など関係なしに良いものは良い、悪いものは悪いというのを、演奏終了後拍手ではっきり出している気がします。
そういう環境にいるから外国人の歌い手の方々はメンタルが強いのかなと感じました。
(コンサートの共演者と)
ルーティンについてはかなり意識しています。
日本にいる時は、朝お風呂に入り、牛丼チェーン店すき家の朝定食を食べ、演奏直前までツムツムというアプリで集中してから本番に臨んでいました。
イタリアにいる時は、朝シャワーを浴びて、水筒に温かい紅茶入れ、行きつけのうどん屋さんで天ぷらうどんを食し、本番に臨みます。
本番の日というかいつもこのような毎日の繰り返しなのですが、メンタルの調整という意味ではとても良く機能しています。ちなみに日本にいる時はすき家に週7で通っております。
いつかイタリアミラノ店ができることを祈っております。
(すき家の朝定)
―日本では週七で通っていらっしゃるんですか!すき家愛に溢れすぎていますね。笑
でも、自分のメンタルを調整できる何かがあり、スムーズに本番に臨めるというのは演奏家にとって大変重要なことと思います。最後になりましたが、今後の抱負、夢など教えてください!
約2年イタリアで勉強してきて技術的なことがだいぶ安定してきたので、これからは海外のコンクールまたは日本の大規模なコンクールにも積極的に参加できたらと思います。
また私の最終的な夢は日本の大学の声楽講師になることなので、これから世界中もっと色々な舞台を踏み、たくさんのことを経験して学び、将来的には自分が持つ生徒たちにその経験や学んだことをうまく伝えられるようになりたいです。
そのためには自分がまだまだ精進して行かなねばいけないのであと1.2年はイタリアで頑張ります。
―この度は貴重なお話をありがとうございました!
―プロフィール―
国立音楽大学卒業、同大学院修了。第10回東京国際声楽コンクール新進声楽家部門第1位及び東京新聞社賞、第34回ソレイユ音楽コンクール声楽部門第2位及び優秀賞受賞。イタリア・ヴェルディホールで行われたミラノ音楽祭にて現代作曲家Kurtag作曲の作品取り上げた演奏会にソリストとして出演し、ヴェルディ交響楽団La Verdi と共演。その他にもミラノ・スフォルツェスコ城、フランス・フレネ音楽祭にてオーケストラとアルトソリストとして共演など、日欧で多数のバロック・現代曲の作品の舞台を踏み研鑽を積む。現在、ミラノ市立音楽院修士課程バロック声楽専攻2年に在籍。Roberto Balconi、上杉清仁の各氏に師事。