朝クラ
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イタリア留学情報ページ『Vissi d’arte, vissi d’amore』Vol.3 ~先輩へのインタビュー~

こんにちは!

今秋からイタリア・ミラノ留学中のソプラノ・清水優美(しみずゆみ)です。

 

Vol.1、2は私自身の留学に関する記事でしたが、今回から2回にわたっては、イタリア留学経験のある先輩方へのインタビューです。留学には様々な選択肢があるので、色々な方からお話を伺ってみるのが良いと思います。このインタビューでも、皆さんの視野を広げていただけたら嬉しいです!

 

第1弾は、2017年9月から1年間、文部科学省日本代表トビタテジャパン第6期奨学生としてイタリア・ミラノに留学された、小林瑞花さん。

 

現在は、東京藝術大学大学院・声楽専攻在学中で、今年12月にはベートーヴェンの第九ソプラノソリストデビューが決定されています。上品な容姿の美しさはもちろんのこと、とても丁寧な言葉選びでインタビューにお答えくださり、お人柄の魅力溢れるインタビューになりました。音楽人生のルーツから大学時代、留学生活のことまで、幅広くお伺いしました。

 

 

バレリーナから音楽の道へ 歌はパートナーのような存在

 

―この度は、インタビューをお引き受けくださり、本当にありがとうございます!はじめに、音楽、歌を始めたきっかけを教えていただけますか?

 

兄と一緒に4歳からピアノを習っていたので、物心がついた時には自然と音楽が周りにありました。3歳からバレエ学校に通っていたこともあり将来の夢はバレリーナでしたが、音大附属の中学校に入学したことがきっかけとなり音楽の道に進むことになりました。

 

 

中学で合唱部に入部し歌う楽しさを知り、その後に附属高校の恩師に出逢い声楽を始めました。幼少時から色々な習い事をしていましたが、歌は私が初めて自分自身で“やりたい!”と感じて選択したものだと思います。自分の気持ちを表に出すことが苦手だった当時の私にとって、歌は気持ちを代弁してくれる頼もしいパートナーのような存在でした。深く学べば学ぶほど自分の怖がりな性格に向き合うことになり、苦しい思いも沢山しましたが、それでもやっぱり歌うことが大好きで続けてきました。いつのまにかすっかりその魅力に夢中になり、歌は私にとって離れられないものになっていました。

 

 

―歌が「頼もしいパートナー」というのは、素敵な言葉ですね。中学、高校と国立音大付属で学ばれたとのことですが、続いて東京藝大学部時代のことについて教えていただけますか?

 

大学受験をし、新しい環境になったことで気持ちを新たに学ぶことができました。声楽科の友人だけでなく、他の楽器や美術学部のお友達とも関わる中で、視野が広がり様々な感覚を養うことが出来ました。

 

 

イタリア留学への想いは音楽中学時代から

 

―留学を考えはじめたきっかけはなんですか?

 

音楽中学に入り、音大の先輩方の背中を見ながら日々学んでいる中で「いつか私も留学をして、本場の音楽を体で感じたい!」という憧れをずっと持ち続けていたので、大学・大学院と進むうちにその想いはどんどん強くなっていきました。

 

 

―留学はいつごろから準備を始めましたか?

 

学生のうちに一度長くイタリアに行きたいと考えていたので、大学院1年時から準備を始め、2年生の後期から休学し、イタリアに行きました。文部科学省の奨学金を受けられることが決まったことも、留学を後押ししてくれました。

 

 

いよいよ始まった留学生活 時には大変なことも

 

―約1年間の日本での準備期間を経て、留学を開始されたのですね。実際に留学が始まってからの生活はいかがでしたか?

 

イタリアに来てからは何をするにも時間がかかり、初めは一日一日の予定をこなすので精一杯でした。日本では目の前のことに追われる毎日でしたが、イタリアに来てからは歌のことだけを考えられる時間をたくさん作ることができ、本当に貴重な日々でした。

 

 

また音楽だけでなく心の面でも沢山の事を学びました。もっとマエストロや周りの人たちと話したい、伝えたい!と思った時にうまく言葉が見つからず、もどかしい思いをしていた時にも、イタリアの人たちは心を開いて優しく待ってくれました。そんなイタリアの人たちと触れ合っているうちに、怖がりな私自身ももっと心を開いて生きていきたいと思うようになりました。こうした感覚は歌を歌っていく上でもとても大切なことのように思うので、日本にいても忘れずに心に留めておきたいです。

 

 

―イタリア人は、暖かい方が多いですよね。私も何度も助けられました。とはいえ、日本人の感覚でイタリアに住んでいると、本当にトラブルがたくさん起こりますよね!何か大変だったことはありますか?

 

滞在許可証の申請をする予約日に、予期しないストライキが起こったことです!イタリアのストライキは基本的に前々から予定が発表されているのですが、この日は突然行われました。地下鉄だけストライキの予定があった日だったのですが、午後から国鉄もやります!と突然発表され、乗っていた電車から何の説明もされずに降ろされ、何もない寂しい駅に1人取り残されました。駅員さんに聞いても周りの人に聞いてもいつ動き出すか全く分からない、この駅だとタクシーを呼んでもいつ来るか分からない、幸運を祈るよ!と言われ、絶望しました。笑 まだイタリアに来て1ヶ月も経たないうちだったので周りにお友達もおらず、他に帰る手段も分からず困り果てた末に、明るいうちに帰らなくては!と思った私はお家まで歩いて帰ることに決めました。携帯のグーグルマップを頼りに、電池がいつ切れるかと怯えながらイタリアのデコボコの道を早足で歩きました。途中、何度も心が折れそうになりましたが、道路に咲いているお花や木ノ実、美しい景色に癒され、心を奮い立たせていたことを覚えています。2時間半ひたすら歩き続けました。見慣れた街の景色が見えて来た時には、本当に涙が出ました。この日だけで数年分も強くなった気がしました。笑 一生忘れられない思い出です。

 

 

これから留学を考えている後輩へアドバイス

 

―私自身、日本で留学に関する情報を集めるのに苦労したのですが、これからイタリア留学を考えている後輩へ何かアドバイスいただけますでしょうか?

 

迷っているのなら一度行ってみて、自分の目で確かめてくるのが良いと思います。憧れているだけではなく、インターネットで検索したり大使館に行って資料を集めたり、留学生の話を聞いたり奨学金を受けたり、情報を沢山集めてイメージを膨らませていくと少しずつ自分の気持ちが見えてきます。自分で考えて動いたこと、自分で決断したこと、自分の体で感じたことは一生の糧になると思います。

 

 

 

―今後のコンサート予定、今後の抱負、夢など教えてください!

 

11月にはフランス歌曲に関する本のレクチャーコンサート、12月はベートーヴェン第九のソプラノソロとして出演致します。小さい頃からバレエをやっていたこともあり舞台が好きなので、宗教曲などに加えてオペラの機会も増えていったらいいなと思っています。また私が恩師からお歌の魅力を教わったように、私もその魅力を伝える手助けが出来るような歌手になりたいです。誰かに伝えるためにはまず自分がその魅力に気づいていなければなりません。いつも心にアンテナを張って、日常の小さな事にも心を動かせる人でありたいと思っています。今まで何度も歌ってきた曲も、まだ見ぬ素晴らしい曲たちにも、いつも自分自身の心をときめかせながら取り組んでいきたいと思います。

 

 

―プロフィールー

小林 瑞花

東京都出身。

国立音楽大学附属中学校ピアノ科卒業後、声楽科に転科。同高等学校声楽科卒業。東京藝術大学声楽科ソプラノ専攻を経て現在、同大学大学院音楽研究科修士課程声楽専攻在学中。文部科学省日本代表トビタテジャパン6期奨学生としてイタリアに1年留学。モンテカティーニ国際オペラアカデミー修了、ディプロマ取得。同国際コンクールセミファイナリスト。国内ではラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017等の他、本年12月海老名文化会館にてベートーヴェン《第九》(東京ニューシティ管弦楽団)ソプラノソロとして出演。声楽を羽根田宏子、高橋大海、伊原直子、吉田浩之、G.Canetti,F.Castellanaの各氏に師事。

 

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うたねこみずかの部屋

歌と猫のことを中心とした徒然日記